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Calamity Edge

Composer : 4696-D

アニメ『マギ・ア・マギ・オンライン』 脚本

 

第3話「魔剣(クラウ)・ア・燦然(ソラス)」

2013/4/20 放送分

担当者:マインラート・ガーデック

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登場人物表

エリオット・ナタルシェフ (男・17) マギマギ好きの男子高校生

リディア・ナタルシェフ  (女・14) エリオットの義妹。兄を独り占めにしたい

ネル・マッキーナ     (女・17) エリオットのストーカーで、常に誘惑していた

レイン・アウグスタン   (女・17) エリオットに恋していた。魔剣に乗っ取られている

ケルベロス        (不明)   ゲームマスター・レインを乗っ取った張本人

リゲル・ナタルシェフ   (男・41) エリオットの父。マギマギの開発チーム所属

サマンサ・ロナード    (女・43) エリオットの母。家出中

エリオット(少年)    (男・12) 5年前のエリオット。事故で右足を骨折していた

レイン(少女)      (女・12) 5年前のレイン。いわゆるボーイッシュな女の子

教師           (女・34) エリオットのクラスの担任

オタクA         (男・??) 詳しいことは省略

オタクB         (男・??) 詳しいことは省略

オタクC         (男・??) 詳しいことは省略

オタクD         (男・??) 詳しいことは省略

○CM

○現実・レインの家・昼

 

レインがベッドでヘッドギアを着けたまま動かない。

リゲルが口に手を当て、様子を見守っている。

 

ネル      「こっちよ」

 

ネルが部屋に入る。続いてエリオットとリディアも入る。

 

エリオット   「あっ、この子、俺に話し掛けてくれた子だ!」

 

エリオット、1話の冒頭で、声を掛けられた様子を思い出す。

 

ネル      「正直、かなり危ないわ。今のレイン、完全にゲームに取り込まれちゃってるもの」

リディア    「ヘッドギア、外せば良くないの?」

 

レインに近づこうとしたリディアを、リゲルが制す。

 

リゲル     「やめた方が良いよ。今のレインの意識は、ヘッドギアに取り込まれてるみたいなんだ。

このまま外しちゃったら、意識と身体が完全に切り離されちゃう」

リディア    「じゃあどうすればいいの!」

リゲル     「ひとまずサーバーメンテナンスってことにして、プレイヤーがログインできないように

はしてみた。でも、この子だけは戻ってこない。本当に、魔剣に支配されてる……危険だけど、ゲームの中に入って直接呼び起こすしかない」

 

ネルがリゲルの身体を揺らす。

 

ネル      「ねえ、本当に助ける心当たりはないの?」

リゲル     「今、会社に掛けあってるところなんだ」

 

エリオット、レインの机の上にあった携帯ゲーム機を見る。可愛いキャラクターのシールが貼ってある。

 

エリオット   「……そうか、そういうことだったんだ」

 

エリオットは自分のヘッドギアを装着する。

 

エリオット   「俺が、行くよ」

リゲル     「エリオット、正気かい?」

エリオット   「うん。誰かが入って呼び起こせばいいんだろ。だったら俺が良い」

リゲル     「ダメだ。エリオットまで取り残されるかもしれないよ」

エリオット   「俺が行かなきゃダメなんだ」

 

エリオットが、レインのゲーム機を掲げる。

 

リゲル     「それは……」

リディア    「あー懐かしいゲーム機だ! 昔タッチペンでよく遊んだなあ」

エリオット   「これを見て、全部思い出したよ。レインは小学生の頃、ゲームの楽しさを俺に教えてく

れたんだ。ほんと、よく遊んだなあ……」

 

エリオットが回想する。

 

○現実・公園・夕方

 

夕方の公園で、少年たちがサッカーやブランコで遊んでいる。

骨折したエリオット(少年)が、松葉杖をつきながらそれを眺めている。

公園のタイヤに座る。足をぶらぶらさせて、目に涙を浮かべている。

 

少年エリオット 「もう、遊べないのかなあ」

少女レイン   「じゃあさ、ゲームしたら!」

 

レイン(少女)の短パンが見える。エリオットが顔を上げると、レインが歯を見せて笑う。

 

少女レイン   「ほら、貸してあげるよ! これなら遊べるでしょ」

少年エリオット 「いいの?」

少女レイン   「うんっ! ゲームだってね、みんなと遊ぶと楽しいんだよ」

 

シールを貼ったゲーム機が、エリオットに渡される。RPGがスタートした。タッチしてモンスターを倒す。

 

少女レイン   「すごいすごい! ボクでも苦労したのに! キミ、才能あるよ!」

 

○現実・レインの家・昼

 

エリオットは、眠っているレインを見下ろす。

 

エリオット   「あれから足が治るまでの間、よく遊んだんだ。あの時は男の子だと思ってたけど……そ

っか、あれは君だったんだ。気付けなかった……行かなきゃ」

 

リディアとネルが、エリオットの前に立ちふさがる。

 

リディア    「ダメ! お兄ちゃんまで取り込まれちゃうよ!」

ネル      「そうだわ。こういうのは詳しい大人に任せるのが賢明よ」

 

リディアがエリオットに抱きつく。

 

リディア    「リディアね、お兄ちゃんのことが大好きだもん。行っちゃヤダよ!」

ネル      「あ、あたしもっ! その、エリオットくんのことは大事だと思ってるし、危ないわよ」

 

ネルが頬を赤くして、顔を伏せる。

エリオットがネルの肩を掴む。ネルの顔が沸騰して煙が出る。

 

エリオット   「……じゃあさ、一緒に来てくれよ。な、リディアも!」

ネル      「あ、あ、あなた、正気で言ってるの?」

エリオット   「おう、ラブエンハンス。使えるんだろ。俺たちの力で、レインを助けようぜ」

ネル      「それはズルいわ! いくらあたしがあなたのパートナーになりたかったからって……」

リディア    「良いよ! お兄ちゃんの為ならなんでもするもん」

リゲル     「リディア?」

 

リディアがリゲルにピースを向ける。

 

リディア    「えへへ、リディアはね。お兄ちゃんに愛を届けられるならいいんだもんっ」

ネル      「じゃ、じゃああたしもっ! 協力すれば良いんでしょっ!」

エリオット   「リディア……ネル……!」

 

様子を見ていたリゲルが圧倒された表情でエリオットを見る。

リゲルはエリオットの肩に手を乗せる。

 

リゲル     「エリオット、立派に育ったね。分かった、許可しよう。だが、危なくなったらすぐに戻

ってくるんだよ」

リディア    「やったー! じゃあ早速ログインしちゃお」

 

エリオットが頷く。リディアが服を脱ぎ始める。ネルがぎょっとしてリディアを見る。

 

ネル      「きゃっ、人の家で何してるのよっ!」

エリオット   「あ、これはリディアの癖で……」

ネル      「じゃああなた、毎日妹の裸を見てるのね。このシスコンッ! ヘンタイッ!」

 

ネルがエリオットに平手打ち。

 

エリオット   「ぐあっ、バカ! 今すぐ行かなきゃいけないんだぞ!」

 

○マギマギ・フィラキ遺跡最深部・夜

 

ログインしたエリオット。後ろにリディアとネルが並ぶ。

三人で中心の円陣を眺める。中央にはレインが両手に剣を構えている。

 

エリオット   「レイン! ようやく君のことが分かった。気付けなくてごめんな」

ケルベロス   「その言葉、届いてないケルよ」

エリオット   「その声は!」

 

レインの背中から、ケルベロスが浮いて登場。口に手を当ててにっしっしと笑っている。

 

エリオット   「お前がレインを乗っ取ったのか!」

ケルベロス   「乗っ取ったなんて言い方は酷いケルね。ケルちゃんはね、教えてあげただけケルよ。こ

の魔剣を取ることができれば、今回のイベントアイテムが手に入るケルってね。ま、ここが裏ルートで、魔剣を取った瞬間にもの凄い数の怨念が聞こえてくるってことは、言い忘れてたかもしれないケルが……」

ネル      「絶対そのせいじゃないの! 今すぐレインちゃんを解放して」

エリオット   「相変わらず説明不足な犬だな!」

ケルベロス   「犬じゃないケル。ケルベロスだケル。それに、解放を決めるのは、ケルちゃんじゃない

ケルよ」

 

レインは表情を動かさないまま、エリオットを眺めている。

 

レイン     「……ここから出て行って。私は、ずっとゲームの世界で暮らすの。誰もパートナーのい

ない私は、ここでずっと、最強の魔王になるの!」

ケルベロス   「にっしっしっし、ほーらレインちゃんもこう言ってることだし? 諦めた方がいいんじ

ゃないケルか~?」

 

エリオットが、遠くのレインに対して手を差し出す。

 

エリオット   「大丈夫だよレイン。俺たちと一緒に出よう。また一緒にゲームしようぜ」

レイン     「ゲームなら、ここで十分。現実なんて、いらないっ!」

 

レインが一気に攻めてくる。両手に持った2つの刀で切りかかってくる。

リディアの杖とネルの銃剣が、片方ずつ受け止める。

 

リディア    「お兄ちゃんは、すごいんだもん。リアルでもバーチャルでもリディアの味方してくれ

て、どっちのお兄ちゃんも恰好いいんだよ。だから、お兄ちゃんに手を出すなあっ!」

 

リディアの杖が跳ね返す。レインは一旦退き、目に見えない速度で遺跡内を飛び回る。

 

ネル      「すごい速度ね……でも、逃げてばっかりじゃダメだわ。あたしだって、エリオットに

は、声を掛ける勇気を教えてくれたんだから。あなたもちゃんと、向き合ってみなさいよ! フレイムマシンガン!」

 

ネルが銃で火の弾を撃つ。レインは次々と避け、ネルに切りかかる。ネルは横に回転して避ける。

リディアはエリオットの手を引いて後ろに連れて行く。

 

リディア    「お兄ちゃん! 補給だよ。ブリーズヒール。はいっ、ぎゅーーっ」

エリオット   「うわあああっ!」

 

リディアがエリオットに抱きつく。ラブエンハンスがどんどん貯まる。

バックステップを取ったネルが、二人にぶつかる。

 

ネル      「ちょっと! 人が真剣に闘ってるときになにイチャイチャしてんのよ」

リディア    「だって戦闘に必要なんだもん!」

ネル      「だからってみんなの前でって、ハレンチすぎるわこのロリ巨乳」

リディア    「むうううっ!」

 

リディアをネルのにらめっこをエリオットが引きはがす。

 

エリオット   「こらこら、今はレインの気持ちが大事だろ」

リディア    「(ネルと一緒に)お兄ちゃんは黙ってて!」

ネル      「(リディアと一緒に)エリオットは黙ってて!」

エリオット   「はい……」

 

三人の様子を眺めていたレインの体を、黒い炎が包み込む。

 

レイン     「リア充、許さない。みんなみんな、爆発しろおおおおお」

エリオット   「危ない、逃げるぞっ!」

 

レインが大きなエネルギー弾を溜め込む。

リディアが飛ぼうとしたが、小さく悲鳴を上げて転ぶ。

 

リディア    「もう魔力がないよぉ」

エリオット   「マズいっ、ネル! リディア! 俺に掴まれ!」

レイン     「ここから、出て行ってっ!」

 

レインがエネルギー弾を放つ。

 

エリオット   「間に合わないかっ」

 

ネルとリディアがエリオットを抱きしめる。飛んでくるエネルギー弾を、エリオットの大剣の先で突くと、衝撃波が三人を襲う。

 

エリオット   「全部受け止めてやるっ。だから戻ってきてくれ! うおおおおおっ」

 

剣先がエネルギー弾を貫く。

黒い球が三人を包み込む。3人が悲鳴を上げて、取り込まれる。

暗闇の中、人影の怨念たちがエリオットを取り囲む。エリオットが口を開けて驚く。

 

オタクA    「なんで俺だけ彼女できないままなんだ……」

オタクB    「親がいちいちうるせえんだよもうやめてくれ!」

オタクC    「また試験落ちたよ。もう嫌だあ」

オタクD    「夢なんてないし、このまま死んでいくのかな」

エリオット   「そうか。これが、怨念の正体」

オタクたち   「(溜息をついて)もう現実なんて、どうだっていいやー」

エリオット   「この怨念たち、とてもじゃないけど、重すぎるっ!」

 

エリオットが頭を抱えて膝をつき、ガクガク震える。

そのとき、両側の耳にふーっと息を吹きかけられて、エリオットは全身を震わせる。

 

リディア    「お兄ちゃん、起きて」

ネル      「しっかりしなさいよ。エリオット」

エリオット   「ネル! リディア!」

 

暗闇の中で、2人がエリオットの腕を抱いている。エリオットがキョロキョロと顔を横に振ると、リディアとネルがエリオットに頷きかける。

 

エリオット   「そうだ。俺たちは1人で生きてるんじゃない。俺はあの時、君に助けられた。だからレ

イン、今度は俺が助ける! おおおおおおっ」

 

エリオットが剣を縦に一閃。

ラブエンハンスが消費され、大きな衝撃波を放つ。

闇が晴れて、すぐ傍にいたレインの身体が吹っ飛ぶ。

レインの目の色に光が宿る。起き上がろうとすると差し延べる手が見える。

 

レイン     「あれ、え、エリオットくん?」

エリオット   「良かった……戻ってきてくれたんだ。君のこと、ようやく思い出したんだ。言わなきゃ

いけないこと、いっぱいあるんだ。さあ、来てよ」

レイン     「いいの? 私も、あなたたちの中に入っても」

エリオット   「うん」

 

レインはエリオットの手を掴む。エリオットがレインを起こす。

レインが見回す。ネルとリディアが、落ち着いた笑顔でレインを見ている。

レインは胸をなでおろす。エリオットが大剣で道の先を示す。

 

エリオット   「さあ、輝かしい現実に出発だ!」

 

○現実・学校・昼

 

エンディングテーマが流れ始める。

教室でレインが頭を下げる。

 

レイン     「ご迷惑をおかけしました!」

エリオット   「いいよいいよ。君にはゲームの楽しさを教えてもらったんだから」

ネル      「それにしても驚いたわね……まさかあなたが、生徒会だったなんて」

レイン     「そうですよ。お礼に、先生に融通をきかせてもらいました」

 

エリオットがプレートを手に持って眺めている。プレートに「VR研究会」と書かれている。

 

エリオット   「ところで、なぁ、リディアも呼んだのは間違いだったんじゃねえの」

 

リディアが手を上げる。

 

リディア    「良いのです! リディアもお兄ちゃんのパートナーだもん」

レイン     「まあまあ、リディアちゃんにもお世話になったし、ねー」

リディア    「ねー」

ネル      「あ、生徒指導の先生あたりに見つかったらマズいわね。まあその時は、エリオットくん

に怒られてもらいましょうか」

エリオット   「おいっ!」

 

教師がカメラを持ってボソボソ呟いている。

 

教師      「それで、なんで私が顧問ってことになってるんだ……」

レイン     「……え? それなりに若くて、新技術に理解がありそうだからですかね」

教師      「わ、若い? そんなこと、久しぶりに言われたかなあ」

ネル      「先生、意外とチョロいんですね」

 

エリオットが少しだけ口角を上げ、VR研究会の看板を扉に掛ける。

 

エリオット(M)「俺は今まで、ずっとゲームの世界で生きていきたいと思ってた」

 

エリオット、何かに気付いて、顔を上げる。扉の前でリディアが手を上げ、おいでおいでしていた。エリオットが黒板に向かう。

扉の前、エリオットを取り囲むように、ネル、リディア、レインが並ぶ。

教師がシャッターを切る。

VR研究会としての初めての写真が、机の上に添えられる。

​横に置かれたヘッドギアが日光を反射する。

 

エリオット(M)「でも最近、ちょっとくらいは、現実を生きても良いなって思うようになった、かな」

 

○ED(スタッフロール)

 

○現実・ナタルシェフ家・夜

 

リゲルが玄関を開ける。

 

リゲル     「はあ、夜勤に会議に、臨時メンテに、散々だったよ。……それにしてもケルベロスって

なんだったんだろう。あんなの、企画書にはなかったはずなんだけどなあ。……ってこの匂い。あっ」

 

リゲルが、玄関に旅行カバンが置いてあるのを見つける。

リゲルがキッチンに駆け寄る。サマンサがエプロンを着け、キャベツを切っている。

 

リゲル     「サマンサ!」

サマンサ    「おかえりなさい、そして、ただいま。お母さんのいない家庭はどうでした?」

リゲル     「うわあああんママ~さみしかったよおおおおお~~仕事ばかりでごめんよ~~~

これからはもっと君を大切にするね~~~~~」

 

リゲルがサマンサに泣きつく。サマンサがリゲルを抱き、よしよし撫でる。

エリオットとリディアが、ジト目で夫婦のイチャイチャを見つめている。

 

エリオット   「なんなんだ、このバカップル」

リディア    「なんなんだ、このバカップル」

(第3話おわり)

~帝国暦2013年 ユーフォリア帝国・とある春アニメの第3話Bパートより~

第1話Aパートはこちら

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