Steel Rain
Composer : Dragon_Klub
とある男の話をしよう。
その男の名は、世界史の教科書を開けば必ず載っている。
この世界で最も憎まれている偉人の一人、誰も殴らなかった大量殺人鬼の話だ。
その男は、イヴァン・ストルーイといった。
片田舎で生まれ育った。幼少期は小屋のような家で、祖父との二人暮らし。「お父さんとお母さんはどこにいるの?」と聞くと、「遠いところだよ」とだけ教えられた。隣国同士の争いが激化し、いつ飛び火が自国に及ぶか分からないような、そんな時代だ。イヴァンは子供ながら、祖父の言わんとしていることを察した。
収入源はないものの、貯金はそれなりにあり、質素であれ貧乏というわけではなかった。祖父は引退した研究者で、蓄えがあったのだ。
家の本棚には、難しそうな本がギッシリと敷き詰められていた。それらは、地元で暮らす職業人であれば開かないような専門書ばかり。二人での生活の中でそれらの本を開くことはなかった。祖父は一人の時でさえ、本に触れなかった。掃除の度に、本棚の天板には多少の埃が溜まっていた。
それが気になったある日、イヴァンは「どうして本棚にしまったままなの?」と聞いてみた。祖父は「もう必要ないからだよ」と言い、「働いていた頃は机の上に積み重ねてたんだよ」なんて笑ってた。中身を読んでみたいと思ったが、祖父も手を付けないような本に自ら触れるのは躊躇われた。
祖父は耄碌してはいない。本の内容は頭に全部入っていた。普段の生活で疑問に思ったことを尋ねると、いつも学術的な見地から答えを出してくれた。学校の勉強は見てくれたし、その先に習う発展的な内容も面白く教えてくれた。
ある時、学校から帰ってきたイヴァンは、見慣れない男が祖父に話し掛けているのを見た。スーツに身を包んだ恰幅の良い男、いかにも社会的立場を持つ人間という感じだった。対する祖父は、いつになく難しい顔をしていた。いつもクラスの誰も知らないような知識を教えてくれる祖父が、眉間に皺を寄せ、あごひげを擦っている。それはイヴァンが初めて見た祖父の思案の顔だった。
祖父はイヴァンを見つけるなり抱き寄せた。突然の出来事に気味の悪さを覚えた。祖父は「いいかい、イヴァン」と優しく言うと、しゃがみ込んでイヴァンと目線を合わせ言った。
「絶対に人を殴っちゃダメなんだ。何があっても、何をされても」
イヴァンは人を殴ったことはなかった。殴りたいと思える現場に出会ったことがなかった。だから祖父が何を考えてこの言葉を言ったのか、分からない。言葉の意図が見えず、素直に頷くことはできなかった。それでも祖父は続けるように、
「殴ったらそいつと同じになる。絶対にダメなんだよ。それだけは、忘れないでおくれ」
ハグをすると、祖父は立ち上がって男についていく。背筋を伸ばして立派に歩く正装の男とは対照的に、祖父の背中は丸まって見えた。誰よりも情けなく見えたその背中が、忘れられなかった。
この日、祖父は初めて夜に家を空けることとなった。祖父がいない一人での食事は初めてだった。仕方なくストックのイモにそのまま齧りついた。冷たくざりざりした食感で、半分食べてやめてしまった。
翌日、家を訪ねてきたのは正装の男だけだった。祖父は連れていない。「おじいちゃんは?」と尋ねると、病死したと告げられた。
そんなはずがなかった。昨日の昼まで、元気にしていたはずだ。死ぬ兆候など全く見ていなかった。二人の間に何があったのかは知らないが、男は悲しそうにも申し訳なさそうにもせず、淡々と事実だけを告げた。
「おじいちゃんを返して」と叫んでも、男は「それはできない」と頑なに拒むだけ。言葉じゃ埒が明かない。大の男に拳を振り上げた。今にも殴りかかろうとした時、昨日の祖父がイヴァンに囁いた。
『絶対に人を殴っちゃダメなんだ。何があっても、何をされても』
ダメだ。ダメだ。……だめだ。
イヴァンは拳を握りしめたまま、ゆっくりと下した。腕はガクガクと震え、爪が肉に食い込んで赤く染まった。それでも、力を緩めることはしなかった。そうしないと、今すぐにでもこの右手が男の鼻骨を砕いてしまいそうだった。
衝動が収まる頃には、大粒の涙で顔はぐしゃぐしゃになっていた。
残されたのは、祖父の遺産だといって渡された金。イヴァンが大人になるまでであれば、なんとか食いつないでいけるだけの財産だった。家財といえば、本棚に残された大量の本が目についた。昨日までは開かなかった代物だ。
しかし今、祖父は家にいない。世界の不思議を解明してくれる存在も、勉強を見てくれる相手もいない。だが、祖父と時間を共にして、今でもインテリアとして飾ってあった大量の本だけは、そこにあった。
イヴァンは本を手に取った。紙はすっかり黄ばみきっていてボロボロだったが、読めないものではなかった。祖父との日常会話で、予備知識は十分だった。内容は化学分野、特に重元素の専門的な書籍が多く並べてあった。
すっかり活字中毒となったイヴァンは、学校に行かなくなり、一日の大半を読書で過ごすようになる。大量の本は、イヴァンの暇と足りない心を満たしてくれた。
本の中には、この世界を構成する物質のことが詳細に書かれてあった。頁を開いている間は、まるで祖父が直接教えてくれているような気がして、少しも退屈しなかった。
壁一面を埋め尽くしていた書籍を、片っ端から手に取り、呼んでいく。それはイヴァンの血にも骨になった。読み終わった後も、一字一句を我が血肉にせしめようと、昼夜を問わず刮目した。
やがて書籍の全てを知り尽くして、読むべきものを失った頃。
読むものを失い、ふと外に出たイヴァンは、野原で仰向けに転がった。白い光がイヴァンの全身を照らす。この光が燃焼ではなく核融合反応に由来するものであることを、既にイヴァンは知っていた。その内容がどの本のどのページで述べられている事かも、思い出すことができた。
……だが、だからといって、何になるのだろう。
一時的な好奇心を満たしたところで、一体に自分のこれからに、何を求めて生きていけばいいのだろう。
生きる意味だとか、信じるべきは何かを、祖父は教えなかった。
研究者としての道を自ら外れて以降、すっと暇を持て余し、イヴァンに付き合ってくれていた祖父に、生き甲斐はあったのだろうか。尋ねたことはなかったが、今更にイヴァンには疑問だった。
祖父は言っていた。
『絶対に人を殴っちゃダメなんだ。何があっても、何をされても』
後に思い返すと、祖父の人生観が垣間見えたのはこの瞬間だけだったと気付く。
殴っちゃダメなのなら、何をすればいいのだろう。そういうことを書いた本は本棚になかったし、それを教えてくれる存在もいなかった。
祖父を連れていったあの男に対して、どういった感情を向けてやれば良いのだろう。イヴァンには分からなかった。風が吹き抜け、草がイヴァンの身体をまさぐった。
退屈になったイヴァンは、久々に学校に顔を出した。誰だと思われた。風貌が変わっていたからだ。この世界のことを多少なりとも知った少年は、同年代の児童らよりも一段も二段も大人びて見えた。
当然であるが、授業に出ても退屈で仕方がなかった。ぼうっと放心状態だったのに、先生に質問されたときは、内容を掘り下げて回答することができた。
授業を受けた後、リーダー格の少年がやってきて、不満そうにイヴァンの肩を突いた。
「お前、つまんなそうなやつだな」
「つまんないよ、こんな授業」
「なんだと!」
まともに学校に来ないくせに、ふらっと現れては注目を掻っ攫っていくのが不満だったのだろう。少年は次は両手でイヴァンの身体を突き飛ばした。イヴァンは平衡感覚を失い、仰向けに倒れる。少年はイヴァンの胴体に跨り、胸倉を掴んで言い放つ。
「何様のつもりだよ」
殴られた。痛かった。
だが、それだけだった。
恐怖はなく、この状態を解こうとは思わなかった。
痛みから解放されたいのは確かだが、イヴァンが殴り返すことはない。それが祖父の教えだったし、何よりイヴァンはひどく冷静だった。こんな時でも、相手のことを冷静に分析できてしまった。この少年には自分を殺す能力も意志もない。気が済めば解放してくれるだろうと。すぐに手が出て威嚇する程度の少年と、そんな少年に付き合っているだけのイヴァン。イヴァンの中で格付けは済んでしまった。
そんな態度が顔に出ていたのか、少年の怒りは加速した。何度も何度も、拳をイヴァンの顔面に叩きつける。その度に激痛がした。痛みはどんどん積み重なり、もうどこが痛いのかも分からなくなる程だ。だが、イヴァンは馬乗りにされながらも、軽蔑の眼差しを決してやめなかった。暴力という手段に訴えるしか能のない少年を、つまらなさそうに見つめるだけだった。
大人のストップが入る頃には、イヴァンの顔面は血だらけになっていた。
それなのにけろっと立ち上がり、イヴァンは鞄を手に取り、まるで何事もなかったかのように帰った。今までイヴァンを支配していた少年の存在など、既に眼中にない。
そんなイヴァンを気持ち悪がったのか、以来児童がイヴァンを相手にすることはしなくなった。
イヴァンは授業に出ることをやめた。
代わりに学校に併設された図書室へと通うようになった。そこは図書室というより蔵書室で、書物であれば収納している場所だった。児童ら向けの本ばかりであったが、その中でたまに地域住民からの寄贈がなされ、専門書が入ることもあった。
そこでもイヴァンは本を読みふけった。そこではもっと様々なことを学んだ。
物語という本が存在することも、ここで初めて知った。初めて取ったのは、正義の冒険者の話だった。全国各地を巡っては、その地域の悪を退治していく勇者だ。この世界の共通認識ともいえる多少の倫理は、知ることができた。だがそれでも、正義を貫くために悪を殴ってしまう主人公のことを、どうしても好きにはなれなかった。自分はこの主人公とは違う。このような悪にはただ軽蔑で返せば良い。そう直感的に感じてしまい、以降物語を読むことはなくなってしまった。
イヴァンの非凡さは、大人の間でも話題になっていた。
やがてある教師から、大学への進学を打診された。しかし身寄りがいない今では、学費を捻出できない。そもそも、生きていく方法など何も考えていなかった。進学するなんてとんでもない話だった。
「大学に知り合いがいるんだ。紹介してあげよう」
そう言われ、教師の求められるままに大学へ足を運ぶ約束をした。
当日、教師の後につくような形でイヴァンは大学に足を踏み入れることになった。
外では、自分よりも年上の若者が、賑やかに行き交っているのが見える。しかし、建物に入るとそこは閑散としていて、通路はほとんど誰も通らない。
その一室、人が居るのかどうかも分からない程の静謐さを纏った扉を、イヴァンは押した。
「やあ、久しぶりだな、元気だったか」
抑揚のない声に驚いた。見覚えのある顔がそこにあった。
祖父と年齢のさほど変わらない、初老の男。
イヴァンが初めて、殴りたい程の強い衝動を覚えた男。
その部屋に居たのは、かつて祖父を連れ去った男なのだ。
「僕の爺さんをどこにやったんだ」
挨拶もなく、開口一番にそう尋ねた。あくまで冷静な態度だが。心の中でイヴァンは、敵意を剥き出しにして睨んだ。事情が呑み込めない教師は、連れの生徒が挨拶もなく敵意を剥き出しにしていることに困惑していた。
「ごめんな、少しだけこの子と面識があってね。二人で話したいんだ」
研究者の男は顎をしゃくり、付き添いの教師を退室させる。
外で聞き耳を立てていないことを確認して、男は言った。
「あの頃は病死って言って誤魔化して、すまなかった」
「本当はどこにいるんだ」
「結論から言う。君のお爺さん、ストルーイ博士は、自ら命を絶った」
「とても信じられないよ。じゃあどうして嘘を教えたんだ」
「本人からことづけを頼まれたのだ。まだ子供だった君に現実を教えるのはあまりに酷だったと判断したのだろう」
「そんなこと、信じられるものか」
「それについては、博士が投げ出した研究について、話す必要があるな」
投げ出した、という物言いが気になった。研究者をやめたことは知っていたが、研究を投げ出したとはどういうことか。
いやそれよりも、イヴァンには引っかかることがあった。自分は祖父が何を研究していたのか。それすらも知らなかったのではないだろうか。
高度すぎる専門知識は素人には理解が及ばない。研究内容は、孫との生活には不要だったのかもしれない。しかし、共に生活をしていく中で、祖父の人生の一幕ともいえる研究内容の片鱗すら見えないというのは、却って不自然ではあった。
「爺さんは、何を研究していたんだ」
「端的に言うなら……重元素、放射性物質を利用した兵器の開発だ」
「兵器……」
祖父の本棚にあった化学物質は、新兵器開発の為だったのだ。
「私も同僚で、ずっと研究に携わっていたよ。まだ試作を繰り返している段階だがね。あれは忘れもしない十二年前、博士は爆発の実験で実の息子夫婦を亡くしていてね。そうか、それが君の両親だったのか……良心の呵責に駆られた博士が研究を投げ出さなければ、今頃は既に実用化に向けて進み出し、君も両親に愛されて育ったろうに」
色々なことが分かっていく。イヴァンは息を呑んだ。
祖父は研究も両親の所在も孫に教えようとしなかった。その理由が、やっと分かった。たった一人残された孫の面倒を見ることにしたのだ。
「兵器開発から抜け出したから、あなたは爺さんを尋ねたのか」
「ああ。決めたのは上の判断だ。ストルーイ博士は有能だったからな。新たな計画書が通り、是非博士にも協力を仰ぎたかった。だが、実際はただの脅しだ。今すぐに研究室に戻らなければ、実験をお前の街で行う。脅すような口調で迎えに行くことが、私の仕事だった」
「あなたは、血も涙もない鬼か」
「私も理想を言えば、過去を捨て去り研究に戻ってほしかったんだ。博士はそれを聞くと自死を決意したのだよ。抵抗もしなかったが、権力に屈することもなかったのだ。おかげで脅しに意味はなくなり、実験は北の更地で行うことになった」
「あなたが殺したようなものじゃないか」
「お爺さんの研究内容が悪かったんだ。兵器の開発、世界の主導権を握るチャンスなのだ。上は相当気が立っていた。私じゃなくても誰かが行っただろう。それも分かっていたからこそ、博士は自ら命を絶ったのだろう」
祖父は誰も殴らなかった。
その代わり誰と敵対することになったとしても、自分を曲げなかった。
祖父の生き甲斐はイヴァンだった。最後まで、祖父はイヴァンを守ろうとしたのだ。
「爺さんは、この国に殺されたのか」
「時代が殺したんだよ。誰もストルーイ博士に共感はしても、理解はしない。してはいけない。でなければ他の列強に食いつぶされることになるからな」
世間を恨んだ。この衝動をどこかに発散させたい気持ちでいっぱいだ。
「この国は有能な人間を求めている。君がこうして大学を訪れられたのも、優秀な若者に早くから研究に携わるようにする国の方針なのだよ。君は……祖父の残した宿題を片付けるつもりなのか?」
考える。人を殴っちゃダメなんだ。そう言っていた祖父に報いる方法を。
「君はとても優秀だと聞いている。流石は博士の孫だ。ここでの研究に参加するならば、協力はしよう。不自由なく生活させてやるくらいの支援はできるだろう」
祖父の亡き今、祖父を追えることならば、なんでもしたい。
イヴァンは考えに考え抜いて、結論を出した。
「できることなら、やらせてくれ」
高らかと放った返事に男の白眉が動いた。
「驚いた。即答とは。私は君のお爺さんの死を見届けた人間なのだぞ。君の前ではなるべく表情を作らないようにしていたし、冷徹に振る舞ったつもりだ。博士と同じ轍を踏むことのないよう、君を研究から遠ざけようとした。殴りたいなら殴られて当然だという覚悟をしていた。というのに、君は私を殴ることもなく、研究までしたいとまで言い出すのか」
「この研究を進めることが、爺さんへの一番の報いになると思ったんだ。それに、人を殴るなと教えられて育った」
「そうか……博士には、頭が上がらないな」
自分の心の中で、祖父が囁いてくる。
『絶対に人を殴っちゃダメなんだ。何があっても、何をされても』
この言葉だけは本物だと思った。
イヴァンは男の下で大学に通い始めた。周囲の若者は年上ばかりであったが、イヴァンがかつて祖父の家で読んだ本を、毎日数ページずつ進めるだけの者ばかりであった。イヴァンについていける者はいなかった。毎日研究室に通い、男の研究を手伝った。
しかし一方、他人には興味がなかった。イヴァンの前には自分を見下す者も、対立する者も、寝首を掻こうとする者も、次々と現れた。だが、イヴァンはそれらとは一切向き合わない。邪魔をされたとしても、軽蔑の眼差しを向けるだけであった。
相手は、体の良い理想ばかりを語る平和主義者だったり、時には弁の立つ実利主義者だったりもした。イヴァンはそれに構わず自身の研究を続けた。殴ることはもちろん、反撃、反論は決してしなかった。
祖父の教えがずっとイヴァンの心に残っていた。
『絶対に人を殴っちゃダメなんだ。何があっても、何をされても』
そこから先は、教科書に載っている通りだ。
やがて研究開発は成功し、人体に多大な影響を及ぼす新型爆弾の開発に次々と成功する。その頃には既にイヴァンを招待した男は亡くなっていたし、イヴァンには妻も子供もできていた。
国からは勲章を授かり、国民の誰もが彼を認め、国外の誰もが彼を恨んだ。
71歳にして、イヴァン・ストルーイは老衰でこの世を去った。彼は生涯、人を殴ることはしなかった。イヴァンの命が消えた後も、徐々に低くなっていく体温が常温と馴染むまで、妻はずっと夫の亡骸に寄り添っていたという。
葬儀には家族の他、軍や政府の要人が訪れた。埋葬の際には帽子を外して黙祷を捧げた。
これ以上ない、最期の最期まで充実した人生だったように見えるだろう。
だが、世界は非情だ。その後1年もしない内に世界大戦が始まり、世界は鉄の雨に晒される。新型爆弾の実戦投入が行われ、イヴァンの爆弾は甚大な被害をもたらした。
それは――イヴァンによってもたらされた爆弾だろうか。
否、イヴァン自体が爆弾だったのだ。
イヴァンの一番の目的は、祖父を殺した世界に対する報復だった。
祖父を殺したこの世界を壊すためだけに、イヴァンは研究に実を投じたのだ。
イヴァン自身は決して殴らない。
しかし自分を曲げることもしない。
そのために、効率的に人を殺戮できる兵器を開発したのだ。
兵器がそこにあるだけで、愚民どもはそれを使い、世界は壊れていく。
イヴァンの予期していた通りに、世界は壊れていく。
人類の智慧がある限り、鉄の雨は今も未来も、永遠に降り続けることになるだろう。
イヴァンは決して、人を殴らなかった。
~帝国暦1971年合衆国 かつての爆心地で語り続ける老人の昔話~