
Composer : Niatrec
―20XX/!!/!!,【記憶掘削機】(サルベージャー)にて
ピピピ。
承認完了。
ID:w0yu9rpae08gh
名前:■■■■■■■■■■■
ピピ。
Selected memory No:06020405-060604050602-0603-0405
Re_Name:Arodnap
開きますか?(Y/N).......Y
PASSWORD:*****************_
u=0701
Search.........Done.
メモリ展開。
完成率【100.00%】
メモリの復元・再生が可能です。
R-memoryを所定の場所に挿入してください。
ブウウウゥゥン……。
―
――
―――
やあ。
僕が何者かはこの際どうでもいいし、君も興味がないだろう。
なので早速本題に移るとする。
稀代の喜劇王、クロブ・アロードナップが遺したとされる、
ありとあらゆる至極の「喜び」が詰まった「箱」がこの世にはある、という噂がある。
その「喜び」は多岐にわたり、五穀豊穣、富国強兵など、
伝承として残っているだけでも108つを数える。
君たちが知っている所で挙げるとするならば、
かつての国の長である、ユーデライヒ=ミヒャルド王は、飢饉に喘ぐ民をこの「箱」で救い、
シュルト=エルンスト村の長である、ジュベッシ=ルーロッドは、
どこからかもたらされたこの「箱」で村を悪党より守った。
ヴォルキ=セイとアルモ=カレイスはリノ=イステールと共に、
オルハ=ガレインの野望を砕いたが、その際にはこの「箱」が大いに役に立ったそうだ。
ファンデルクーへ=スライプネルは民衆の沈んだ心をこの「箱」を使って大いに沸き立たせた。
他にもローラン=ベルギューズ、ヒューリコ=テルメロイもこの「箱」の使用者だという。
この「箱」は実在する、と息まく人々と、荒唐無稽な御伽噺であると一笑に付す人々がいるけど、
しかし、そのどちらであったとしても、「箱」はけして開けてはならない。
「箱」という性質上、中身は有限だ。
そして、内容物は至極の「喜び」。
となれば、必然的にこの「喜び」はいつか尽きるものだ。
さらに、「箱」を物理的なものでなく抽象的なものとすれば解決、とはいかない。
君の聞く「伝承」の中で、愚かにもさらにいくつかの「喜び」が開け放たれたと思しき記述がある。
後にその開け放った人物は「賢王」や「民を憐れむ心を持つ主君」などと称されて久しい上、
いやしくも一部の「王」はどうして開け放つに至ったかを記した自伝すら出版している。
多分君たちも読んだことがあるんじゃないかな。
さて、これらすべてを「偽物だ」と投げ捨てるのは簡単だが、
そうすることで得られるのは闇だ。偏見ともいえる。
勿論すべてを「本物だと信じろ」と強制するつもりはないけどね。
ところで、「箱」の中の有限の「喜び」が消えた時、最後に残っているものは何か。
……だいたい想像がつくだろう?
君もよく似た箱を知っているはずだ。
開けちゃいけなかった箱を開けた結果も。
その箱に入っていた「モノ」は、到底「喜び」なんかじゃないことも。
その箱の底にはかつて入っていた「モノ」と真逆のものが入っていることも。
だから、絶対に、例え好奇心からでもこの「箱」を開けてはいけないんだ。
――君がこのメモリを聞いている頃には、
それがどういうことか、わかっているはずだ。
そう、それが君の知りたかった、この戦争の「起源」だよ。
「箱」は底の底まで綺麗に開け放たれたんだ。
ひっくり返されて、出てきた最後のモノすら、もうその「箱」にはないよ。
―――
――
―
同日07/01,【記憶掘削機】前【ロビー】
メモリの中にあったモノは、やはり、というものだった。
そうでなくては説明のつかないことがたくさんあった。
でも、信じたくはなかった。