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Eupholic Journey
-def preclude_catastrophe(quantize):-

Composer : Lucifer

3月21日
わたしはイェドという神におそわれてけがをしてしまったらしい
あたまがうまく回らないのでびーしーあいをきどうできなくなってしまった
もじもじょうずにかけなくなってしまっている

いしゃはわたしのちりょうをしてくれるそうだ
なんとかペンはもつことができたので、日記をつけろといわれて、ノートをもらった

3月30日
ここ何日間で文字の書き方を教えてもらって、
少しずつきちんとした文章を書けるようになってきたと思う

でも、できること以上にできないことを発見してしまう数日だった


道が分からないから一人でトイレに行けない
栄養チューブが取れたは良いがご飯の食べ方が分からない
そもそもイェドにおそわれたときのきおくも無い
正直かなり悲しい

医者からは何も言われていないけど、元の仕事に戻ることはできないんじゃないかと思う
武器、全部売ろうかな
買ってくれる人、いるかな

4月10日
ようやくまともな食事ができるようになったのに、

感情のコントロールがきかなくてトレーニングの時間の以外はずっと薬で眠らされている


暴れたら点滴を打たれて、うとうとしているうちに時間がどんどん飛んでいってしまう

4月18日
最近は精神が安定しているといって自由に活動させてくれるようになった
医者の診察も久々に受けることができた
最初に会ったときのことをよく覚えていなかったが、金髪碧眼の若い男性だった
彼の名前はアレクサンダーというらしい

4月25日
家族も街のみんなも死んでしまったなんて


生きるのが辛い
どうしてわたし以外はいなくなってしまったのだろう


どうしてどうしてどうして

4月27日
アレクサンダーに「生きながらえたことが苦しいか」と問われた
全くの事実なので何も言えなかったが、図星だったのを向こうも察してくれて、とある提案をしてくれた

彼は人類を救済するために誰かひとりの命を欲していて、いま複数人に声をかけているらしい
最終的にその「ひとり」に選ばれるかどうかはわからないけれど、

その後悔が本物なら名乗りをあげてみないか、みたいな事を言われたと思う

4月29日
もういちどアレクサンダーに会って、話を聞いてきた

彼の計画にもし選ばれれば、機械に乗せられて、身体を小さく小さく分解されるらしい
そのときに死への感情やイェドへの感情が強ければ強いほど、大きなエネルギーが得られるそうだ
それをイェドにぶつけて、奴を消滅させるという
実体のない神なので、武器で殺すことはできないらしい

仮でもいいので同意してくれれば、実際に機械を見せてくれるそうだ

5月11日
アレクサンダーの研究室へ行ってきた


感情を持たない物体でも、分解すればある程度エネルギーは得られるらしく、

その辺の埃を分解して投影画面を揺らす様子を観察させてもらった
生き物を分解するわけにはいかないので、アレクサンダーが似たような仕組みの機械を使って実演してくれた
彼が「窓を割りたい」と念じると、割れはしないけれど確かに何かが窓に当たるような音がした

5月13日
提案された計画に参加するためには、BCIを起動できるようになることが条件らしいので、

BCIを起動するリハビリを組んでほしいと頼んできた
アレクサンダーいわく、今まででもっともやる気に満ちあふれた目をしていたらしい

死ぬためにリハビリするのもおかしな話だが、イェドを消し去るためならわたしは何だってしてみせる

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