Beast Out
Composer : O-INU 2nd IGNITION
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新感覚マーダーミステリー『Beast Out』ルールブック
オークラントで実際に起きた事件を基にしたマーダーミステリー!
喰うか、喰われるか。究極の騙し合いが幕を開ける!
・ストーリー
帝国北部の小都市オークラントには「狼男」の伝承が存在し、狼を殺す為の「儀式」が継承されているという。
帝国歴1465年。とある晩から、村民の死体が村中央の広場に晒されるようになった。
死体はどれも、腹部を切開された無惨な状態で発見された。
一連の猟奇殺人を食い止めるべく、帝国からは屈指の治安維持小隊が派遣される。
小隊を案内することになったのは、オークラントの村長ギルバートと、孤児院の院長であるネルガルだ。
だが村に向かう道中、小隊は突然の雷雨に襲われる。
付近にあった村はずれの小屋で一晩を凌ぐことになるのだった。
そして翌日――。
村長ギルバートが、何者かによって無惨に殺されていたのだ。
小屋に近付けた者はいない。また、返り血を浴びている者もいない。
小隊かネルガルの中に、確実に「狼男」がいるのだった。
伝承を知るネルガルは言った。
「『狼男』を駆除します。私に従い、狼を追い払うための『儀式』を執り行ってください」
・PC(プレイヤーキャラクター)紹介
①アルディス(25歳・男性・黒髪黒眼・横を刈るツーブロック・高身長)
治安維持小隊所属の兵士。純朴だが下戸。狼男に強い復讐心を抱いている。ギルバート村長の死体の第一発見者。
②グウェン(31歳・男性・金髪碧眼・短髪ショート・色白で筋肉質)
治安維持小隊所属の兵士かつ小隊のリーダー。普段は良い父だが酒癖が悪く、酒を飲むと乱暴になる。オークラントの連続怪死事件にこの小隊を派遣するよう、自ら志願した。
③イーサン(34歳・男性・赤髪茶眼・天然パーマ・太め体質)
治安維持小隊所属の兵士。未婚で女癖が悪く、同僚か部下の女性に絡みにいっては拒絶されている。雷雨で視界が悪い際、まるでの犬のように鼻を利かせて小屋を見つけた張本人。
④メルル(27歳・女性・茶髪赤眼・短めのストレート・褐色肌で筋肉質)
治安維持小隊所属の紅一点。まじめだがグウェンやイーサンに振り回され、いつもとばっちりを受けている。母がオークラント出身の占い師であり、秘術を学んでいる。
⑤ネルガル(58歳・男性・灰髪黒眼(メガネ着用)・ショートヘア・やせ型)
オークラントの孤児院の院長。小隊の案内人。狼男を排除するための「儀式」の内容を行うことを提案する。小隊の案内の為に、孤児院の担当時間をギリギリまで調整していたという。
・ルール
このゲームは5人用となります。それ以外の人数で遊ぶことはできません。
また、このゲームは1度しか遊ぶことができません。
仲の良い友人と、部活の先輩後輩と、時間に余裕がある時に遊んでください。
(所要時間:2~3時間)
⓪準備
まずはサイコロやじゃんけん等、適当な方法で自身のPCを決めましょう。
このキャラクター以外では遊ぶことができませんので、慎重に選んでください。
決めた後は、自身の担当するキャラクターのシナリオを、それぞれ読みましょう。
「全員に公開している情報」「公開せずに守り抜きたい秘密」の情報は確認しておいてください。
ここまでの準備を行った上で、ゲームは始まります。
①議論
話し合いのターンです。
ゲームはネルガルの語った儀式の内容に沿って行われます。
「仮狼」は次の「仮狼」を指名してください。
(最初の「仮狼」はネルガルとなります}
PCは、それぞれ3つずつ、他人に公開していない情報を抱えています。
指名された「仮狼」は他のPCに持ち物を調べられます。
まだ公開していない情報のうち1つを呈示してください。
(既に3つとも情報を開示しているPCは、「仮狼」に指名できません)
呈示した後、2分間の議論が行われます。
新しい情報について問い詰めたり、
これまでに出た失言について問い詰めたり、
怪しんでる人の怪しい点を逆に怪しんでみたり、
自由な議論で狼男をあぶり出してください。
狼男陣営の場合、狼男の正体を明かされないよう巧みに議論を誘導しましょう。
話題をそらすことの他、無実と思われるPCの粗を探し、罪をなすりつけることも手です。
これを10回行います。
②投票
全10回の議論時間の後、投票を行います。
各PCは、最も怪しいと思ったPCに投票してください。
最も多くの票を集めたPCが処刑となります。
最多票を獲得したPCが2人以上となった場合は、最多票を獲得したPC同士で決選投票を行ってください。
そこでも同票だった場合は、「仮狼」となった回数の多い人が処刑されます。
「仮狼」となった回数まで同じだった場合、
ネルガル>アルディス>グウェン>イーサン>メルル
上のうち、最も先に名前が書かれているPCが処刑となります。
狼男を縄にかけることができれば、村人陣営の勝利です。
それ以外の一般人が縄にかかった場合、狼男陣営の勝利です。
③最後の審判
誰が縄に掛かったかによって、最後のストーリーが変化します。
処刑されたPCが、該当する最後のシナリオを読んでください。
喰うか、喰われるか。
究極の騙し合いの運命を決めるのは、あなたです。
このゲームを気に入ってくださいましたら、まだ結末を知らない友人たちに教えてあげてください。
その時は、あなたがゲームマスターをしてあげてくださいね。
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男はルールブックを閉じ、ベランダから窓の外を見やる。
深夜の住宅街はすっかり寝静まって、少し欠けた月が暗闇の世界を穏やかに照らしていた。
この夜が明ければ、念願の商品が発売される。
企画から内容まで、何もかもが新しかった。長年ボードゲーム開発をしてきた男の会社にとって、マーダーミステリーとはあまりに知らないジャンルだったからだ。
エンタメ作品に仕上げるにはかなりの苦労を要した。それでも販売に漕ぎつけられたのは、このゲームの可能性がはかり知れないものだったからだ。一人で見る漫画や小説とは違う。設定で共通のシナリオに挑むRPGとも違う。マーダーミステリーでは、各キャラクターが同じ舞台で、全く異なる目的を持って動き回る。すれ違う思惑。腹の探りあい。その臨場感が、他のゲームとは何より違う。
よりスリルなゲームへと昇華させる為に、男は実際の事件を基にした。
その分、世界観もキャラクターもかなり詳細に作り込むことになった。どのキャラクターの視点でも、緊迫感に満ちた犯人当てゲームを行えるように、それぞれの行動が理に適うように、綿密にデザインを行った。おかげで、渾身の一作が誕生したという訳だ。
嵐の小屋で可能性は無限に広がる。
人が狼を見つけたり、狼が人を欺いたり、そして、隠された第三の選択肢に気付いたり……とまあ、色々な展開に繋がる要素がふんだんに詰め込まれている。
一度プレーした者は二度とプレーできないが、楽しむことは可能だ。自らゲームマスターを引き受け、新たな友人たちのゲームを主催すれば良い。絶対に同じ展開には転がらない。そのプレイヤーでなければ起こり得ない、一度きりのサスペンスに居合わせ、このゲームの新たな側面を知るだろう。ねずみ講形式でこのゲームは広がっていく。
男は両手を組み、月に祈りを捧げる。
ゲームの基となった事件は、とあるご先祖様が遺した手記で知った。これは、ご先祖様の実体験なのだ。
実際、オークラントにその手の「儀式」はあった。(今伝えられている儀式とは違う部分もあるが)
例の年に村人の何人かが猟奇的な死を遂げていたことも明らかになっている。
男の仕事は、それを現代のゲームに置き換えるだけだった。
男は思う。あの事件に巻き込まれたご先祖様は気の毒だ。小隊の移動中に大雨が降ったことも、たまたま見つけた家屋が簡易的な小屋でしかないことも、全ての歯車が悪く嚙み合った結果としか言いようがない。
だがその悲しい事件は、これから商品として世間に送り出される。
あの時失われた命も、これで報われてくれると良いのだが。
男はニヤリと口角を上げる。
人にしてはやたら主張の強い犬歯が、月の光に煌めいた。
~帝国暦2019年 とあるボードゲーム会社勤務のゲームプランナーの自宅から~